スタッフコラム

「企業で使う、オープンソース」〜第2回 オープンソースの課題と解決策〜

株式会社 野村総合研究所
オープンソースソリューションセンター 寺田雄一

[更新:2007/06/13]

今回は、業務システムにおけるオープンソースの課題とその解決策についてご紹介する。

オープンソースの課題

第1回で述べたように、オープンソースの活用は企業に多くのメリットをもたらす。一方で企業が業務システムにおいてオープンソースを活用する際には、いくつか解決するべき課題がある。例えば、以下のようなものである。

・ 数あるオープンソースの中で、どのオープンソースを使えばよいのか
・ オープンソース同士、及び商用製品との組み合わせにおいて整合性をどう担保するか
・ 頻繁に行われるバージョンアップに追随するべきか

どのオープンソースを利用するべきか

非常に多くの種類があり、また同じ機能を提供するものが複数存在するオープンソースの中で、利用するオープンソースを選択する作業は非常に重要なポイントになる。この選択を誤ると、利用したオープンソースが機能、品質・信頼性、性能などの面で成熟しておらず、システム要件を満たさないばかりか、障害が頻発する場合がある。また、コミュニティの活動が活発でなく、セキュリティパッチやバグFIXの提供、および機能拡張が継続的に行われないといった問題も発生する可能性がある。
利用するオープンソースの選定は、前述のような考慮が必要とされる難しい作業であるが、「世界中で多くのひとが利用しているオープンソースを選択する」という方法が、わかりやすく効果が高いといえる。このようなオープンソースは、機能、品質、信頼性、性能などの面で成熟していることが期待できる。また、コミュニティの活動も活発で、迅速なセキュリティ対応、機能改善対応、継続的な機能拡張も期待できる。
NRIオープンソースソリューションセンターでは、前述のような考えに基づき、オープンソースの成熟度やプレゼンスを独自にレーティングした「オープンソースマップ」を作成し、オープンソース採用の判断基準としている。

図1:オープンソースマップ
図1:オープンソースマップ

単体ではなく組み合わせで利用する

種類が多いオープンソースをプロジェクト毎、システム毎に新たに組み合わせていたのでは、品質は担保できず、効率も悪い。NRIオープンソースソリューションセンターでは、こういった課題を解決する手段として、予めオープンソースの組み合わせを決定し、事前に検証した上で、複数のプロジェクトやシステムに対してこのオープンソースの組み合わせを展開している。これを「OpenStandia/Application Server(以下、OpenStandia/AS)」と呼んでいる。(図2)

図2:OpenStandia/Application Server
図2:OpenStandia/Application Server

OpenStandia/ASは、単に使用するオープンソースを規定しただけではない。性能、信頼性、セキュリティ、運用などのシステム品質を考慮した上で、各オープンソースのパラメータを設計している。また、システム品質に関するテスト項目を実施し、システムインフラ全体としての高い品質をも実現させている。また、OpenStandia/ASは、「バージョンアップは極力行わない」というポリシーを採用している。必要最低限のバージョンアップを取り込むが、不要な機能追加には追随しない。さらにこの固定されたバージョンに対して、7年間の保守サポートサービスを提供している。これらの技術およびサービスの提供により、業務システムでも安心できる安定運用を可能としている。

OpenStandiaの効果

このような取り組みにより、OpenStandia/ASを導入したシステムではオープンソースの活用により大幅にTCOを削減すると同時に、非常に安定した運用を実現している。さらにOpenStandia/ASでは設計や検証作業が事前に行われていること、面倒な複数のオープンソースの導入とパラメータの設定作業を、ほんの10分程度で完了することができる専用のインストーラーを用意していることから、システムの開発フェーズにおけるアーキテクトの作業負担を軽減し、大幅に効率化できるといった効果もあげている。 OpenStandia/ASは、ダウンロードから無償でダウンロード可能である。ぜひお試し頂きたい。

株式会社 野村総合研究所 オープンソースソリューションセンター 寺田雄一
株式会社 野村総合研究所
オープンソースソリューションセンター 寺田雄一

NRIオープンソースソリューションセンター(OSSC)のマネージャー。
2003年にOSSCを立ち上げ、複数のOSSの組み合わせを事前に検証したOSS基盤を提唱し、OpenStandia™パッケージを開発。

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