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Vector情報更新日:2025/04/08

Vectorとは

Vectorは、データを効率的に収集、変換、転送、インデックス化、クエリ、分析するためのオープンソースのデータパイプラインツールです。特にログやメトリクスを管理・統合するために設計されており、リアルタイムでのデータ処理に優れ、大量のデータを効率的に扱うことで、企業や組織がその情報を最大限に活用できるよう支援する高速で信頼性の高いオブザーバビリティパイプラインです。

Vectorの背景

現代のシステムは、マイクロサービス化やコンテナ化が進み、複雑性を増しています。それに伴い、システム全体の可視性を確保するためのオブザーバビリティ(可観測性)の重要性が高まり、オブザーバビリティを実現するためには、ログ、メトリクス、トレースなどのデータを収集、処理、分析する必要があります。これらのデータは量も種類も増大しており、従来のツールでは対応が難しくなっていました。

従来のオブザーバビリティパイプラインは、Fluentd や Logstash といったツールを組み合わせて構築されることが一般的でしたが、これらのツールはそれぞれ異なる特徴や得意分野を持っており、組み合わせることで以下のような課題が生じていました。

  • パフォーマンス:大量のデータを処理する際に、パフォーマンスがボトルネックとなる場合がある。
  • 複雑性:複数のツールを連携させるため、設定や運用が複雑になる。
  • 柔軟性:様々なデータソースや宛先に対応するためには、それぞれのツールを個別に設定する必要がある。
  • 拡張性:新しいデータソースや宛先に対応するためには、ツールの拡張やプラグインの開発が必要になる。

Vector の開発

Vectorの初期開発は、Timber.io によって開始され、その開発を主導していました。 2019年にTimber.io のメンバーの一部が独立し、Vector Labs を設立、Vectorの開発に引き続き注力します。Vectorは、2020年にApache License 2.0 の下でオープンソースソフトウェアとして公開され、誰でも自由に利用、改変、配布できるようになります。

その後、Vector Labs はクラウドモニタリングプラットフォームを提供する Datadog に買収され、Vectorは Datadogのプラットフォームに統合されました。現在、Vectorは、Datadogの主導で開発し、自社のプラットフォームに統合、機能強化しています。

Datadogは、Vectorの開発においてコミュニティとの連携を重視し、GitHub上で開発状況を公開することでユーザーからのフィードバックを積極的に取り入れています。Vectorは、Datadog による買収後もオープンソースソフトウェアとして開発が続けられており、今後の発展が期待されます。

主な機能

Vectorは、データパイプラインを構築するためのツールで、リアルタイムにデータを収集、変換、出力することができます。

基本機能

  • データ収集:様々なデータソース(ログ、メトリクス、トレースなど)からデータを収集できます。
  • データ変換:収集したデータを加工・変換できます。
  • データ集約:複数のデータストリームを統合できます。
  • データ転送:処理したデータを様々な場所に転送できます。

主要コンポーネント

Vectorは、以下の主要コンポーネントで構成されています。Sources、Transforms、Sinks は、それぞれ独立したコンポーネントとして機能します。

  • Sources:データの入力元となるコンポーネントです。ファイル、標準入力、HTTP、各種クラウドサービスなど、様々なデータソース(ログファイル、Syslog、HTTPエンドポイント、TCP/UDPストリーム、Kafka、CloudWatch Logsなど)に対応しています。データを Vector内部のイベント形式に変換し、Transforms へと渡します。
  • Transforms:データを加工・変換するコンポーネントです。フィルタリング、集計、フォーマット変換など、様々な処理を行うことができます。
  • Sinks:データの出力先となるコンポーネントです。ファイル、標準出力、HTTPエンドポイント、TCP/UDPストリーム、Elasticsearch、CloudWatch Logs、各種クラウドサービスなど、様々な場所にデータを転送できます。複数の Sinks を設定することで、データを複数の場所に同時に出力することも可能です。

Vectorの柔軟な設計により、様々なデータ処理ニーズに対応したパイプラインを構築することができます。

主な特徴

Vectorは、高速で信頼性の高いデータ処理パイプラインを構築するためのオープンソースツールです。
主な特徴を以下に示します。

高パフォーマンス:Rust言語で書かれており、パフォーマンスとメモリ効率に優れている点が大きな特徴です。メモリ使用が効率的で、高速なデータ処理が行えます。大規模なデータを扱う際のパフォーマンスが特に優れています。

柔軟性:豊富なコンポーネント(ソース、変換、シンク)と設定オプションにより、さまざまなデータソース(ログ、メトリクス、トレースなど)に対応し、柔軟なデータ処理パイプラインの構築が可能です。

使いやすさ:簡潔で直感的な設定ができ、専門的な知識がなくても導入しやすい設計になっています。単一のバイナリで提供され、インストールやデプロイが容易です。設定ファイルはTOML形式でも記述できるため、可読性が高く、管理しやすい。

メリット・デメリット

メリット・必要性

効率的なデータ管理:膨大なデータを効率的に管理し、必要な情報を迅速に見つけることができます。
データ分析の促進:ビジネス上の意思決定を支援するためのデータ分析が容易になります。
リアルタイムモニタリング:システムの状態やパフォーマンスをリアルタイムで監視できます。
コスト削減:分散型システムの特性によって、より低コストでデータ処理ができます。
スケーラビリティ:必要に応じて処理能力やストレージ容量を簡単に拡張できます。

デメリット・注意点・課題

学習コスト:初めて使用する際には、全機能を使いこなすための学習が必要です。
設定の複雑性:大規模なシステムでは設定が複雑になることがあります。
サポート体制の制限:オープンソースであるため、公式の商業サポートは限られているため、問題解決に時間がかかることがあります。
セキュリティ:分散型システムのため、セキュリティ対策が重要になります。
チューニング:最適なパフォーマンスを維持するために、設定の調整や最適化が必要となる場合があります。

類似プロダクト

Vectorに類似のデータストリーム処理パイプラインを構築するためのプロダクトとしては、以下のものが挙げられます。

オープンソースプロダクト

Fluentd:軽量で柔軟なログ収集・処理ツール。プラグインが豊富で、様々なデータソースや出力先に対応できます。
Logstash:Elasticsearch Stack の一部として提供される、強力なログ収集・処理ツール。豊富なプラグインと高度なフィルタリング機能が特徴です。
Filebeat:軽量で高速なログ収集ツール。Elastic Stack と連携して利用することが多いです。

商用プロダクト

Splunk:ログ分析プラットフォーム。強力な検索・分析機能と豊富な可視化機能が特徴です。
Sumo Logic: クラウドベースのログ分析プラットフォーム。機械学習を活用した異常検知機能が特徴です。
Datadog:モニタリング・オブザーバビリティプラットフォーム。ログ、メトリクス、トレースデータを統合的に分析できます。
New Relic:アプリケーションパフォーマンスモニタリングプラットフォーム。ログ、メトリクス、トレースデータを収集し、アプリケーションのパフォーマンスを可視化します。

動作環境

Vectorは、様々な環境で動作するように設計されています。
具体的な動作環境は、以下の要素によって異なります。

オペレーティングシステム

Vectorは、以下のオペレーティングシステムで動作します。

  • Linux
  • macOS
  • Windows

それぞれのOSで、推奨バージョンが指定されています。詳細な情報は、Vector のドキュメントやリリースノートを確認してください。

アーキテクチャ

Vectorは、以下のアーキテクチャで動作します。

  • x86_64
  • ARM64

それぞれのアーキテクチャで、パフォーマンスや利用できる機能に違いがある場合があります。

その他要件/詳細情報

Vectorの動作環境に関する詳細な情報は、Vector公式サイトで確認できます。

Vector Licenseリンク

Vectorは Apache License 2.0 に基づいて提供されており、ユーザーは自由に利用、改変、配布することができます。ただし、以下の点に注意する必要があります。

  • 著作権表示: Vector のソースコードや配布物には、著作権表示とライセンス条文を含める必要があります。
  • 免責事項: Vectorの利用に関して、作者は一切の責任を負いません。

Vector Licenseリンクに関する詳細な情報は、以下の公式ドキュメントで確認できます。

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