Redisの概要
Redis(レディス)は、C言語で書かれたオープンソースのインメモリデータストアで、REmote DIctionary Serverを略したものです。
Redisは、イタリアのSalvatore Sanfilippo(サルヴァトーレ・サンフィリッポ)氏により2009年に開発されました。
当初はWebのログをリアルタイムで解析するツールをスケーリングすることが目的でしたが、いろいろなアイデアが追加されたことによりRedisとして誕生しました。
Redisの正確な発音はRedとissを合わせたものとされています。
Salvatore Sanfilippo氏は、2020年6月に開発責任者を辞任しており、現在(2021年9月現在)はRedis社とコミュニティメンバーにより継続して開発が行われています。
従来のRDBMSとは異なり、データをキーとバリューという形式で保存するため、キーバリュー型NoSQLに分類されます(Redisのドキュメントでは、キーバリューストアではなく、データストラクチャーサーバと呼んでいます)。
バリューには文字列や数字の他にリスト、ハッシュ、セット、ソート済みセット、ビットアレー(ビットマップ)、ビットフィールド、ストリーム、Geospatial、HyperLogLogsを取ることができ、他のキーバリュー型NoSQLと比較しても豊富なデータ構造をサポートしています。
Redisはクエリに対してメモリで応答するため、非常に高速に応答できます。
安価なハードウェアでも1秒間に数万リクエストを処理でき、キャッシュやメッセージングシステムの用途で広く利用されています。
Redisはマスタースレーブ型レプリケーション(データ複製)をすることができ、マスターノードのデータをスレーブノードに複製することができます。
アプリケーションは、スレーブからデータを読むことにより、読み込み負荷分散ができます。
Redisバージョン3からはRedis Clusterという機能が導入され、シャーディング(水平分散)をすることができます。ただし、Redis
Clusterの最小推奨構成は、マスタースレーブ型のレプリケーション×3=6台となっています。
この方法では、各ノードがどこにデータが格納されているかを知っており、リクエストが来た時に、自分のノードにデータがないときに、クライアントに対してデータの存在するノードを教える動きになります(下図参照)
他のキーバリュー型NoSQLと比較すると、Redisは軽量・シンプルで扱いやすい一方、水平分散の機能が部分的であるため、比較的小規模で利用するのに適しています。また、データ型が豊富なため、複雑なデータを格納する要件がある場合は適しています。
Redisの主な機能
非構造データ格納 | 事前にデータの構造を定義すること無く、データを格納できます。 |
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高速なレスポンス | データベースに対する問い合わせにはメモリで応答するため、高速なレス ポンスができます。安価なハードウェアでも1秒間に数万リクエストを処理できるため、キャッシュ層として広く利用されています |
軽量で簡単 | Redisはひとつのバイナリで完結し、サイズも650Kbyteと非常に軽量です。 |
出版・購読のサポート | 予めクライアントがキー(およびキーパターン)に対して、購読の登録をしていると、 そのキー(およびキーパタン)に対してデータの更新(出版)があった際に即座にデータを受信することができます |
レプリケーション(データ複製) | Redisはマスタースレーブ型レプリケーション(データ複製)をすることができ、マスターノードのデータを非同期でスレーブノードに複製することができます。アプリケーションは、スレーブからデータを読むことにより、読み込み負荷分散ができます。 |
シャーディング(水平分散) | Version 3から実装されたRedis Clusterを用いることにより、シャーディングが可能になります |
データ永続化 | データに対する変更はメモリで応答し、それとは非同期でディスクに書き込まれます。書き込むタイミングについては、前回書き込みからの経過時間と更新回数の2つの値を設定できます。 またデータの更新を追記型ログに書くモードが選択可能で、その場合必ずデータは永続化されますが、応答速度は下がってしまいます。 |
パイプライン | サーバの応答を待たずにコマンドを発行することができます。 |
期限付き保管 | データに期限を付けて、期限が切れたデータを自動的に引き落とすことが できます。 |
データ記憶容量制限 | データの記憶容量を定め、それよりも多くなった場合に様々なアルゴリズムに従って、データを自動的に追い出すことができます。利用できるアルゴリズムは、LRU、ランダム選定、生存期間順、などを選択することができます。 |
トランザクション | 複数のオペレーション(データ変更、インクリメント、配列への PUSH)を、一貫性を持ちながら実施することができます。 |
LUAスクリプト | LUAスクリプト言語をクエリ内で評価することができます |
セキュリティ | Redisはシンプルなクライアント認証のみを提供し、データの暗号化 や、クエリのエスケープは提供していません。
Redisは信頼されたネットワーク内での利用を前提としており、直接インターネットに晒すことは推奨されていません。 なお Redisバージョン6からは、ACLがユーザごとに設定可能となりました。また、SSL/TLSがオプション機能としてサポートされています。 |
Redisのデータ型と主な操作
格納できるデータ | 例 | 主に可能な操作 |
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String | id : "watanabe" | CRUD、インクリメント、デクリメント、文字列連結、部分文字列 |
Hashes | watanabe :{ name : "watanabe" password : "hoge" } |
CRUD、インクリメント、存在確認 |
Lists | tweets :["good-morning", "hello"] | PUSH、POP、要素数、部分取得、部分削除、他の配列への要素渡し |
Sets | friends : { "Yamada", "Nomura" } | CRUD、和集合、積集合、差集合、存在確認、ランダム取得 |
Sorted sets | friends : { "Nomura", "Yamada" } | CRUD、順位取得、部分取得 |
Bitmap | flags: 00101000 | オフセットを指定した値指定 |
HyperLogLogs | >pfadd hll a b c d >pfcount hll |
PFADD,PFCOUNT、PFMERGE |
Geospatial | >GEOADD Sicily 13.361389 38.115556 "Palermo" 15.087269 37.502669 "Catania" (integer) 2 | GEOADD、GEODIST、 GEOHASH、GEOPOS など |
Stream(Redis5から) | >XADD mystream * sensor-id 1234 temperature 19.8 1518951480106-0 | XADD、XRANGE、XREVRANGE、XACKなど |
Redisの主な制約
データ容量は物理メモリ量 | Redisは物理メモリ以上のデータ量を扱えません。 (Version 2.0~2.4までの間は仮想メモリという機能が話題に上がっていましたが、2.6から削除されました。) |
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トランザクションのロールバック | トランザクションのロールバックはサポートされていません。「永続化モード」で利用しており、トランザクション中にサーバがダウンした場合、 部分的にデータがディスクに書き込まれた状態になります。この場合「redis- check-aof」ツールを用いて部分的に書き込まれた部分を取り除く必要があります。 |
ノードを超えた集合演算 | 水平分散環境において、ノードに分散しているデータに対して集合演算はできません。 |
Redisと同類のソフトウェア
OSSではmemcached、Riak、商用製品ではOracle NoSQL Database、クラウドサービスではAmazon ElastiCache、Microsoft Asure Redis Cache、Google Could Datastoreがあります。
Redisの動作環境
ANSI C言語で書かれており、外部依存性もないため、C言語実行環境であれば動作します。
推奨環境
- Linux (最も推奨)
- FreeBSDやmacOSといったPOSIX準拠システム
- SmartOSのようなSolarisシステム(コミュニティーはベストエフォート対応)
コミュニティーではサポートしていない環境
- 64bit Windows
Redisのライセンス
Redisのライセンスは、「三条項のBSDライセンス」に基づいて公開され、営利、非営利を問わず、誰でも自由かつ無償で利用・改変・再配布できるようになっています。 一部のサード・パーティー製のソースコードには、異なるBSDまたはBSD互換ライセンスが含まれています。
参考情報
Redisのサポート
NRIではお客様のご要望に応じて様々な支援ができるサービスをご用意しました。
詳細は下記ページをご確認ください。