DRBDの概要
DRBD(ディーアールビーディー)は、「Distributed Replicated Block Device」の略で、ネットワークを通じて、複数のサーバ間のハードディスク(ブロックデバイス)をリアルタイムにレプリケート(複製)するソフトウェアです。
一般的な冗長構成であるRAIDとは違い、ネットワークを介してレプリケーションが行われるため、離れた拠点間での冗長化が可能です。そのため、地震などの自然災害や火事などの不測の事態においても、サービスが継続できる環境を構築することが可能となっています。
DRBDは1999年に、当時ウィーン工科大学の学生であったPhillip Reisner氏が自身の修士論文として初バージョンを開発しました。現在は同氏が2001年11月にオーストリアのウィーンに設立したLINBITによってオープンソースとして開発が進められています。
2007年にはLinxuカーネルコミュニティにソースコードを提供しています。Linxuカーネルコミュニティも、DRBDの重要性を認め、2010年には正式にLinuxカーネルに統合されました。そのため、すべての主要なLinuxディストリビューションに展開されており、ハードウェアやソフトウェアに依存せずに高可用性を実現することができます。
LINBITコミュニティサイトでは、ケーススタディとして、カナダのオンライン大学やアメリカ政府運営の国立医学図書館などでの利用実績などを紹介しています。
DRBDの最新バージョン(GA)は、DRBD 9.0.24-1、9.0.23-1、8.4.11-1です。(2020年9月現在)
DRBDのライセンス
DRBD(ディーアールビーディー)のライセンスは、GPLv2(GNU General Public License v2)となっています。 GPLv2の適用範囲でソフトウェアのコピーや配布、ソースコードの公開を原則として、ソースコードの自由な改変も認められています。
DRBDのライセンスについてご不明な点がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
DRBDの動作環境
DRBD(ディーアールビーディー)はLinuxカーネルモジュールを必要とするため、以下のようなディストリビューションで動作します。(バージョン9.0.21の場合)
- Red Hat Enterprise Linux (RHEL)バージョン6、7、8
- SUSE Linux Enterprise Server (SLES)バージョン11SP4、12、15
- Debian GNU/Linux 9 (stretch)、10 (buster)
- Ubuntu Server Edition LTS 14.04 (Trusty Tahr)、LTS 16.04 (Xenil Xerus)、LTS 18.04 (Bionic Beaver)
DRBDの特長
DRBD(ディーアールビーディー)は、次のような特長があります。
リアルタイムレプリケーション | 上位アプリケーションがデバイスのデータを書き換えると、そのデータをリアルタイムでレプリケート。 |
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アプリケーションから透過的 | アプリケーションは、データが複数のホスト上に格納されていることを意識する必要がない。 |
同期/非同期に対応 | 同期でミラーリングを行う場合には、すべてのホストのディスクへの書き込みが完了した後で、アプリケーションが完了通知を受け取る。 非同期でミラーリングを行う場合は、ローカルディスクへの書き込みが完了した際に、すぐにアプリケーションが完了通知を受け取る。この際、他のホストへの書き込みは後で行われる。 |
シェアードナッシング | DRBDとPacemakerを組み合わせることで、単一障害点を持たない安全なHAクラスタ環境を構築することができる。 共有(単一コンポーネント)ではなく、分散(冗長化)環境を簡易に実現できるため、ハードウェアの故障によるサービスの中断だけではなく、重要なデータの喪失を防ぐことができるなど、安全性の高いシステムを構成することが可能。 |
多ノード対応 | 最新版のDRBD9では、最大32ノードのリアルタイムレプリケーションが可能。 |
コスト効果 | RAIDのような専用のハードウェアが不要で、Linuxカーネルに標準で取り込まれているため、商用製品に比べて大幅に導入コストを削減することができる。 |
DRBDと同様の機能を提供する製品
類似機能を提供するソフトウェア製品としては、Arcserve Replication/HA、DataKeeper、SymmetricDS、InfoScale Enterpriseなどがあります。