トップ ブログ クラウド時代を支え、DXを加速させる「コンテナ技術」とは?

コンテナ技術は、ビジネスのスピード感が求められる現在、特にDXには不可欠な技術です。ビジネス環境が急速に変化する現代において、ITインフラは柔軟で効率的な運用が求められています。クラウドの普及やDX(デジタルトランスフォーメーション)、DevOpsの導入といった動きに伴い、企業は技術の進化に対応する必要があります。このような技術革新の中で、コンテナ技術は重要な役割を果たしています。
本記事では、コンテナ技術がITインフラにどのように貢献しているのか、そして、コンテナ技術と仮想化技術の違いに触れながら、コンテナ技術の導入による具体的なメリットをご紹介します。

変わりゆくITインフラとコンテナ技術

ITインフラは、時代とともに絶えず進化しています。
かつては、1台のサーバ上で単一のOSを動作させる方法が一般的でした。
しかし、1990年代後半に仮想化技術が登場し、サーバのリソースをより柔軟に活用できるようになりました。

さらに、2000年代にはコンテナ技術が登場し、アプリケーションの軽量化や移植性の向上が進みました。そして、2010年代以降は、クラウド技術の普及により、ネットワークを通じて柔軟にリソースを利用する環境が一般的になりました。この流れの中で、クラウドとの親和性が高い仮想化技術やコンテナ技術も広く浸透し、現在のITインフラの基盤となっています。

コンテナ技術と仮想マシン

コンテナ技術と仮想化技術はどちらも同方向の技術であり、コンテナ技術はいわば仮想化技術の新機軸ともいえます。ここでは両者にどのような違いがあるのか、解説します。

仮想化技術とは

仮想化技術は、1台の物理的なサーバ上で複数のサーバを仮想的に動作させる仕組みです。物理的なサーバ1台につき一つのOSを動作させる従来の方法とは異なり、1台のサーバで複数のOSを利用できるメリットがあります。

このときに仮想的に構築されたサーバは、「仮想サーバ」や「仮想マシン(VirtualMachine=VM)」と呼ばれています。

仮想マシンは、ソフトウェアによってCPU、ネットワーク機器、ストレージなどのハードウェアを仮想的に構築し、物理サーバと同様に利用することが可能です。仮想マシン上にはそれぞれOSが動作しており、物理的なサーバ上のOSを「ホストOS」、そして仮想マシン上のOSを「ゲストOS」と呼びます。

コンテナ技術とは

コンテナ技術は仮想化技術と似ていますが、ゲストOSを不要とする点が異なります。
仮想化技術では、仮想マシン(VM)ごとに独自のゲストOSを持ち、その上でアプリケーションが動作します。

これに対して、コンテナ技術では、アプリケーションと必要な環境を「コンテナ」としてまとめます。このコンテナは、ホストOSのカーネルを直接利用し、その上で動作します。この仕組みにより、ゲストOSを持たずに軽量な運用が可能です。ホストOS上でコンテナが直接動作するため、多数のアプリケーションを効率的に管理できます。

コンテナを作成する過程は「コンテナ化」と呼ばれ、コンテナランタイム(またはコンテナエンジン)を使用して行います。また、複数のコンテナを効率よく管理・運用するために、オーケストレーションツールが利用されます。これらの技術により、企業は柔軟でスケーラブルなITインフラを構築できます。

コンテナ技術のメリット

前章では仮想化技術とコンテナ技術の基本的な違いを解説しましたが、コンテナ技術のメリットはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは目的のアプリケーションを動作させるという視点で、コンテナ技術のメリットを紹介します。

動作が高速・軽快

仮想マシンは、物理サーバ上に仮想環境を構築し、仮想ハードウェアやゲストOSを起動する必要があるため、起動に時間がかかります。

一方、コンテナ化されたアプリケーションは、ゲストOSを介さず直接アプリケーションを実行できるため、OSの起動時間が不要で、素早く動作します。また、ゲストOSが不要な分、仮想マシンに比べて使用するリソースが少なくなり、その結果、より高速に動作します。このように、起動の速さと動作の軽快さが、コンテナ技術の大きなメリットといえます。

データ容量が小さい

これまで解説したように、コンテナを動作させるためのゲストOSは含まれないため、一つのコンテナの場合はもちろん、複数のコンテナを用意した場合でも、必要なデータ容量は小さく済みます。

OSのメンテナンスが容易

コンテナ技術により、OS管理が簡素化されます。仮想化技術では、各仮想マシンが独自のゲストOSを持ち、個別のアップデートやセキュリティ管理が必要です。一方、コンテナはホストOSのカーネルを共有するため、ゲストOS関連のメンテナンスが不要になり、アップデートやセキュリティ対策が一元化されます。これにより、管理の効率が向上し、運用コストの削減が実現します。

開発環境の構築が容易

アプリケーションの開発でもメリットがあります。コンテナは環境の一貫性を提供するため、開発環境、試験環境、本番環境の全般において同じ動作が保証されます。開発時の動作環境を調整しやすいため、本番環境と同様の開発環境や試験環境を容易に準備することが可能です。複数名での開発も円滑に進められるため、迅速にアプリケーションの提供が実現できます。

コンテナ技術のデメリット

さまざまなメリットがあるコンテナ技術ですが、一方でデメリットも存在します。ここではコンテナ技術を導入するうえで知っておきたいデメリットを紹介します。

ホストOSに依存する

コンテナ技術は、ゲストOSを必要としないメリットがある一方で、利用可能なアプリケーションがホストOSに依存するというデメリットがあります。コンテナ化したアプリケーションは全てホストOS上で動作するため、ホストカーネルとの相性が重要となるでしょう。

なお、こうした問題を解消する技術も登場しており、例えばWindows上でLinuxを仮想的に動作させるWSL2(Windows Subsystem for Linux 2)があります。この技術を用いることで、ホストOSがWindowsでも、Linux向けのコンテナを利用可能です。

データの保存はコンテナ外のストレージへ

コンテナ技術では、コンテナ破棄時にデータが失われるため、アプリケーションが保存するデータはコンテナ外のストレージを利用する必要があります。

コンテナ外のストレージが必要なのはデメリットですが、このことによる恩恵もあります。
仮想マシンではゲストOSのログなどのように、起動のたびに仮想サーバの内部にあるデータが変更される可能性がありますが、コンテナ技術の場合は外部にデータがあるため基本的に内容は変わりません。何度でも同じ状態で起動でき、動作の一貫性と高い安定性を維持できます。

セキュリティ対策がより重要

コンテナ化されたアプリケーションは、適切な対策を講じなければセキュリティリスクにさらされる可能性があります。例えば、コンテナ内のアプリケーションが特権コマンドを実行できる設計になっている場合、ホストOSや他のシステムへの不正アクセスを許す恐れがあります。

また、攻撃者がコンテナの脆弱性を悪用し、アプリケーションにマルウェアを感染させるリスクもあります。そのため、公開するコンテナには、イメージ署名、脆弱性スキャンといった十分なセキュリティ対策を施すことが重要です。加えて、ホストOS自体のセキュリティを強化することも不可欠です。

DXが急がれる今、なぜコンテナが注目されるのか

近年、コンテナ技術はDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する技術として注目されています。その大きな理由の一つは、アプリケーションの開発を迅速化できることです。DX推進では、新しい機能を短期間で開発し、迅速に導入することが求められます。コンテナ技術を活用することで、小規模なサービスを迅速に開発し、それらを組み合わせて大規模なシステムを構築する「マイクロサービス」や、ソフトウェアの開発と運用を連携させる「DevOps」が実現しやすくなります。

また、コンテナ技術の普及を支えるもう一つの要因として、コンテナを効率的に管理できる「コンテナオーケストレーションツール」の充実が挙げられます。以前は選択肢が限られていましたが、近年はさまざまなツールが登場し、中には業界標準とされるものもあります。これにより、コンテナ環境の管理や運用がしやすくなり、コンテナ技術の活用がさらに広がっています。

代表的なコンテナオーケストレーションツール

コンテナ技術は複数のコンテナを利用することが基本であり、その管理に欠かせないのがコンテナオーケストレーションツールです。ここでは2つのコンテナのオーケストレーションを紹介します。

Kubernetes

Kubernetes(クバネティス)は、もともとGoogleが開発したツールであり、コンテナオーケストレーションの標準と呼ばれる技術です。多くのホストOSに対応していることに加え、豊富なオープンソースライブラリを利用できるといったメリットがあります。
柔軟性が高く、セキュリティ機能が多岐にわたっているため、大規模な開発で選ばれることが多いのが特徴の一つです。運用においては、高度なスキルを持つ技術者が求められています。

Docker Swarm

Docker Swarm(ドッカースウォーム)は、Docker社の開発したコンテナオーケストレーションツールで、導入の迅速さや直感的に操作可能なインターフェースが特徴です。インターフェースにおいては、同じくDocker社の提供している「Docker Engine」などと共通の「Docker CLI」を使用しているため、Docker Engineなどを利用したことがあれば、学習コストは低いといえます。

まとめ

ITインフラの新しい形のコンテナ技術は、仮想化技術とは異なり、ゲストOSなしでアプリケーションを動作させられます。また、コンテナ技術はアプリケーション開発が短期間で対応できる点がメリットの一つです。
DX推進のように迅速な開発・導入が必要なとき、またはコストを抑えつつ開発を行いたいときに、そのメリットが大きく活かせます。一方で、コンテナ技術特有のスキルが必要です。そのため、技術者の確保が課題となることに加え、長期間の安定稼働が求められる基幹システムなどでは複雑なアーキテクチャ設計と運用体制の整備が前提となります。
コンテナ技術の導入にあたっては、まず小規模なシステムで試験運用を行ったうえで、適用範囲を慎重に見極めることが重要です。

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