バージョンアップ情報
Rocky Linux情報
Rocky Linuxとは
Rocky Linux(ロッキーリナックス)はCentOSの代替としてRed Hat Enterprise Linux (RHEL)と100%互換性を保つことを目指し、コミュニティ主導で現在開発が進められている新たなLinuxディストリビューションです。
2020年12月にRed Hat社は、それまでRHELのダウンストリームとして開発されていたCentOSの開発中止を突如発表し、今後はRHELのアップストリームとなる「CentOS Stream」に注力すると発表しました。これはRHELに先行して新パッケージやパッチが適用される開発ブランチに相当するものとなるため、これまでのようにRHELの代替OSとして利用することができなくなりました。
また、CentOS 8のサポート期間が2029年5月31日から2021年12月31日へと大幅に短縮されたことも利用者にとって大きな問題となりました。こういったことを背景として、CentOSに代わってRHELの代替となるOSが求められるようになりました。
その中でいち早く名乗りを上げたのがRocky Linuxです。Rocky Linux はCentOSプロジェクトの創設者であるGregory Kurtzer(グレゴリー・クルツァー)氏が率いており、その点も大きな期待を集める理由の一つとなっています。
Rocky Linuxは Rocky 8(RHEL 8互換)、Rocky 9(RHEL 9互換)が正式安定版としてすでにリリースされています。さらに、最新のメジャーバージョンであるRocky Linux 10「Red Quartz」が2025年6月11日にリリースされました。これはRHEL 10.0の一般提供開始日である2025年5月20日に続くもので、RHELとの互換性を維持するというRocky Linuxのコミットメントに従うものです。
また、Rocky Linuxはサポート期間についてもRHELとの互換性を意識しており、バージョンごとのサポート期間は以下のようになります。
Rocky 8 | Rocky 9 | Rocky10 | |
---|---|---|---|
リリース日 | 2021-06-21 | 2022-07-14 | 2025-06-11 |
一般サポート終了日 | 2024-05-01 | 2027-05-31 | 2030-05-31 |
セキュリティサポート終了日 | 2029-05-01 | 2032-05-31 | 2035-05-31 |
主な機能
Rocky Linuxには以下のような機能があります。
自動化 |
anacron、cron、cronieなどを使ってコマンドの自動化を行うことが可能です。また、Ansible、Puppet、Chefなどの構成管理ツールとの連携も容易です。 |
---|---|
バックアップ・同期 |
ファイルシステムのミラーリング、バックアップ、同期などを行うことが可能です。 |
コンテンツ管理 |
NextcloudやDokuWikiといったCMSを利用することが可能です。 |
通信サービス |
Asteriskなどを使うことでIP PBX システム、VoIP ゲートウェイ、会議サーバー、その他のカスタムソリューションを提供することが可能です。 |
コンテナ |
Podman、Buildah、Skopeoなどを用いたOCI準拠のコンテナ環境およびLXDサーバを利用することが可能です。 |
システム管理 |
Cockpitによるウェブベースのホスト管理が標準で利用できます。 |
データベース |
MariaDB、PostgreSQL、MySQLなど各種データベースサーバーを利用できます。 |
デスクトップ |
GNOME40/42、KDE Plasma、MATE Desktop、XFCE Desktop といった複数のデスクトップ環境を利用することが可能です。 |
DNS |
BINDによるプライベートDNSサーバを利用することが可能です。 |
エディタ |
microやviといったシンプルエディタから、Neovim + NvChad、VS Code、Atom、JetBrains IDEなどのようなIDE環境まで利用することが可能です。 |
|
主流なOSSを組み合わせてメールシステムを構築可能です。 |
ファイル共有サービス |
高可用な分散ファイルシステムであるGlusterFSや、NFS、Samba、SFTPサーバなどを利用することが可能です。 |
ネットワーク |
NetworkManagerによるネットワーク構成管理が行えます。また、LibreNMSやPrometheus、Grafanaを利用した帯域幅やサービスステータスのモニタリングが可能です。 |
パッケージ管理 |
パッケージ管理 DNF (Dandified Yum) によるパッケージ管理が可能で、独自のパッケージビルドを行うことも可能です。また、Flatpak、Snapなどのアプリケーション配布フォーマットもサポートしています。 |
プロキシ |
HAProxyやPound、Nginx、Traefik、Envoyをロードバランサとして利用できます。 |
仮想化 |
VirtualBox、KVM/QEMU、libvirtなどを利用してRocky Linux上で仮想化環境を利用できます。 |
Web |
Apache HTTP ServerやNginxにより複数のサイトを構成することができます。PHP、Python、Node.js、Ruby on Railsと連携することで動的ページを生成することも可能です。 |
主な特徴
Rocky Linuxは次のような特徴があります。
- RHELから直接ソースを再ビルドしているため、ユースケースに依存せず、非常に安定したOSとして利用することができます
- 定期的なアップデートと10年間のサポートライフサイクルによる確かな安定性をすべて無償で提供しており、エンタープライズ用途にも対応します
- コミュニティがプロジェクト活動を継続できるよう、コミュニティ、スポンサー、パートナーの三者が長期的視点に立って投資を行っています
- 他のLinux(CentOS Stream、CentOS、AlmaLinux OS、RHEL、Oracle Linux)からの移行を簡単にするスクリプトを無料で提供します
類似プロダクト
Rocky Linuxの類似プロダクトとして以下のものがあります。
RHEL互換Linux
- AlmaLinux OS(旧Project Linux)
- MIRACLE LINUX(AlmaLinux OSと提携)
- Oracle Linux
その他のLinux
- Amazon Linux
- Azure Linux(CBL-Mariner)
- CentOS Stream
- Debian Linux
- openSUSE
- Ubuntu Linux
動作環境
Rocky 10の動作環境は以下の通りです。
コンポーネント |
最小要件 |
---|---|
CPU |
1GHz 64-bit(AVX対応)、またはARM/POWER/IBM Z/RISC-Vで同等のもの |
メモリ |
1GB(GUI使用の場合2GB) |
ディスク容量 |
10GB(20GB以上推奨、GUI使用の場合は40GB以上) |
ネットワーク |
イーサネットまたはワイヤレスアダプタ |
ディスプレイ |
1024×768(GUIの場合のみ) |
メディア |
USB、またはDVD-ROM |
ファームウェア |
UEFI、またはBIOS(UEFI推奨)、セキュアブート(オプション) |
以下のCPUアーキテクチャに対するOSイメージが提供されていますが、バージョンとの組合せにより提供されていない場合もあります。
CPUアーキテクチャ |
Rocky 8 |
Rocky 9 |
Rocky 10 |
---|---|---|---|
AMD/Intel (x86_64) |
○ |
○ |
○ |
ARM (aach64) |
○ |
○ |
○ |
PowerPC (ppc64le) |
- |
○ |
○ |
IBM Z (s390x) |
- |
○ |
○ |
RISC-V (riscv64) |
- |
- |
○ |
また、提供されるISOイメージには以下の3種類があります。ただし、一部の組合せにおいてはISOイメージが提供されない場合もあります。
Boot |
ネットワーク経由でRocky LinuxをインストールするためのブータブルISOイメージです。レスキューモードとしても利用できます。 |
---|---|
Minimal |
Base Environmentという最小のパッケージ構成のみを含むISOイメージです。 |
DVD |
BaseOSとAppStreamレポジトリを含む完全なISOイメージで、レポジトリの追加なくインストールを完了できます。DVD ISOイメージからRocky Linuxをインストールするのは最も簡単で一般的な方法です。 |
また、主要なクラウドプロバイダ(AWS、Azure、GCP)向けの最適化されたイメージも提供されています。コンテナ環境での利用のために、Docker Hub上にも公式イメージが公開されています。
Rocky Linuxのライセンス
Rocky Linuxのライセンスは3-Clause BSD Licenseです。
オープンソース年間サポートサービス
OpenStandiaではOSSを安心してご利用いただけるように、オープンソース年間サポートサービスをご提供しております。
サポートしているOSSは下記ページをご参照ください。
関連OSS
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サポート対象
Red Hat Enterprise Linux
レッド ハット エンタープライズ リナックス。Red Hat社によって開発、販売が行われている製品版Linuxディストリビューション
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Debian GNU/Linux
デビアン グニュー リナックス。パッケージ管理システムにdebを採用しているLinuxディストリビューションです。
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CentOS
セント オーエス。Red Hat Enterprise Linuxをベースにして作成されたLinuxディストリビューションです。